2010年12月18日土曜日

本棚のしおり

『ストーリー・セラー』
有川 浩

二人の「ストーリー・セラー」の物語が故に、
どこまでが真実でどこからが“ストーリー”なのか    


-sideA-
彼女は“書ける側”だった。
「君は翼を持ってるよ。
俺は君が飛んでるところを見てみたい」
そうして彼女は、とても運がよくてとても運が悪い作家になった。
「仕事を辞めるか、このまま死に至るか、二つに一つです(中略)
奥さんは思考することと引き替えに寿命を失っていくのです」

-sideB-
「前は女性作家が死ぬ話だったろ?
今度は女性作家の夫が死ぬ話にしてみたら?」
面白そう。夫が死ぬという話は面白そう。
そんなことを考えていたから――これはバチが当たったのだ。
「ご主人のすい臓に腫瘍が発見されました」
こんな運命は認めない。
あたしは作家だ。夢を商う作家だ。
夢なら不幸は逆夢だ。――それなら。
あたしは、この物語を売って逆夢を起こしに行く。
橘   

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